2学期です。運動会・体育祭に始まり、多くの学校行事があり、学校は大忙しの日々を送っています。
先日、埼玉県教育局北部教育事務所の先生方と秩父市立西小学校を訪問した際、校長先生が用意してくれた学校の負担軽減の資料を拝見し、「先生の笑顔は、子どもの笑顔へ」というページが目に留まりました。「負担軽減と子どもの笑顔?」と、一瞬ピンとこなかったのですが、副題の「子どもたちと向き合い、元気に働き、豊かに生きるために」を見て、ストンと腑に落ちました。負担を上手く調整し、笑顔で子どもたちと向き合えば、子どもたちも笑顔になる。この資料には11か条が示されていましたので、いくつかご紹介します。
- 終わりの時間を意識する。
- 仕事が効率的に行えるかどうかは段取りで決まる。
- 頼まれた仕事は自分のため。
- 一人より二人・・・、チームワークで乗り切ろう。
- 他の人の仕事を助けると、自分の仕事も早く進む。
他6か条です。
そして、最後に「ワークライフバランスの確保が健全で効果的な教育活動につながります」とありました。なるほど、単に、仕事の量を減らそう、定時に帰ろう、というのではなく、段取り力、チームワークなどを心がけ、チーム学校として負担軽減を図ることによって、一人一人の教職員の負担軽減を図っていくことを狙っているんだ、と思いました。確かに、負担軽減は仕事量や勤務時間量の軽減だけではなく、職場環境の整備や雰囲気づくりによる心理的な負担軽減も大切だと思いました。雰囲気の良い職場だと、多少の残業も苦にならないけど、重く沈んだ職場だと、わずかの残業も心にこたえます。
本年6月9日に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」には、「教員の厳しい勤務実態を踏まえ、適正な勤務時間管理の実施や業務の効率化・精選を進めるとともに、学校の指導・事務体制の効率的な強化・充実や勤務状況を踏まえた処遇の見直し・検討を通じ、長時間勤務の状況を早急に是正することとし、年末までに緊急対策を取りまとめる」とあります。これを受け、6月22日には、中央教育審議会に対し、学校における働き方改革に関する総合的な方策について諮問がなされ、8月29日、学校における働き方改革特別部会から次の3点について緊急提言がなされました。
1 校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
2 全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
3 国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること
この緊急提言を見て、ある中学校の校長先生が話していたことを思い出しました。「若い先生には、部活指導が終わり、自分の仕事を少し片付け、ホッとした時の職員室での同僚との語らい、これが一番癒されるひと時だし、教師としての勉強にもなる。」
世界に冠たる日本の学校教育は、そのような時間を大事にしながら、協力的な職場の雰囲気、学校文化、同僚制の中で受け継がれてきたものです。このような、教員同士の「語り合い、教え合い、学び合う時間と場所の確保」を抜きにして、「とにかく早く帰りなさい」だけで、日本の学校は大丈夫だろうか?という不安もあります。
子どもたちへの教育の仕事は、商品の“生産性向上”とは異なり、勤務時間管理の適正化、業務の効率化・精選だけでは上手くいかないものがある、ということを改めて考えさせられました。
まずは、勤務の実態把握、業務改善により長時間勤務の状況是正に早急に取り組むとともに、教員が「A明るく、T楽しく、M前向きに」子どもたちと向き合えるよう、学校の環境改善、雰囲気づくりに取り組みます。併せて、『国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること』に大いに期待しています。
昨年、ユネスコ無形文化遺産に登録された「秩父祭」は、冬の祭です。これに対して、夏の祭「川瀬祭」が、7月19日、20日に行われ、8基の笠鉾・屋台が曳き廻されました。子どもたちも、真夏の暑さの中、力をふりしぼって頑張りました。秩父の自然、歴史と伝統文化、祭などが育んだ精神的風土や文化が子どもたちに与える影響は大きいものがあると思います。これが、秩父の子どもたちの「心の屋台骨」となっているところがあるのではないでしょうか。私は、学校訪問の際、子どもたちの様子を拝見し、秩父の子どもたちは、「とても素直で優しい」という印象を持っています。この「素直さ」は「伸びしろ」につながります。伸びしろをいっぱい持った秩父市の子どもたちの「伸びたい」、「わかりたい」という気持ちにしっかり応えていきたいと思います。
さて、本年3月に新学習指導要領が告示され、7月には、来年度から前倒しで実施される移行措置の内容も示されました。また、秩父地区の小学校・中学校の教育課程説明会も実施されました。私は、小学校・中学校とも、今回変更点が多い、総則部会に参加しました。
学習指導要領の改訂は、国が数年かけて、一線級の教育専門家の叡智を集め、総力を挙げて行う一大事業です。時代の変化に対応した、これからのナショナル・ミニマムとしての教育課程の基準が示されたものです。しっかりと改訂の趣旨を理解し、秩父市としての対応を行いたいと思います。特に小学校については、外国語活動が3学年・4学年に、教科としての英語が5学年・6学年に新設されます。その分、年間授業時数も増やすことになります。来年度からの移行措置、2年半後の全面実施に向け、授業時数の確保、指導体制、指導内容等について、しっかりと準備していきたいと思います。
先日、教育委員会内部で、新学習指導要領にどのように対応するのかについて、指導主事を中心に勉強会を行い、内部検討を開始しました。8月25日から始まる2学期までのわずかな間ではありますが、比較的落ち着いた時期に、解説書を読み込むなどして、新学習指導要領についてしっかり学び、趣旨・内容の理解を徹底し、課題を整理して今後の対応方針を検討していきたいと思います。秩父市の子どもたちに、時代の変化に対応した確かな学校教育を提供できるよう、教育委員会も頑張ります。
夏。学校を訪問すると、青空の下、プールから水の音や子どもたちの声が聞こえてきます。午後には30度を超える連日の暑さ。小学校については、この6月までに全ての学校の普通教室にエアコンを整備しました。涼しさの中で、子どもたちは集中して学習しています。この秩父の厳しい暑さに間に合ってよかったとつくづく思います。中学校についても、計画に沿ってしっかりと整備してまいります。
さて、秩父市教育委員会では、6月22日(木)の夜から、原谷公民館で「チチブ・アフタースクール・スタディ~夜勉~」を始めました。元教員や大学生など、地域の人材を活用した学習ボランティアが、小学校4年生から中学校3年生の自主学習の支援を行う事業です。来年の3月まで、月2~3回、計22回にわたって「夜勉」を実施することとしており、100人を超える子どもたちが参加してくれます。開校式では、「自分から学びに向かうきっかけとして、わかる喜びを体感してほしい」と子どもたちへ伝えました。
本年6月1日に出された教育再生実行会議第10次提言「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子どもを育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」においても、「地域の教育力を掘り起こし、学校だけでなく地域も子どもたちの育ちに関わり、その役割を果たすことが必要不可欠」とされています。学校を取り巻く課題が山積する中で、教員の長時間勤務に支えられる学校は、教員の働き方改革、学校の業務改善が求められています。このような中で、子どもたちの「自ら学びに向かう姿勢」をしっかり支えるためにも、地域の教育力が必要です。原谷公民館の館長さんからは、「公民館に子どもたちの声が響くのは素晴らしいこと」という嬉しいお言葉もいただきました。
今後、コミュニティ・スクールを推進する中で、地域の教育力も活かしながら、学校・家庭・地域がますます連携を深め、子どもたちの確かな成長を支えていきたいと思います。
さわやかな春の日々、秩父は新緑を求める観光客で賑わっています。これから、梅雨、暑さに向かう時期。心も体も疲れの出やすい時期です。体調管理に気をつけていただきたいと思います。
さて、4月に埼玉県の学力・学習状況調査、国の全国学力・学習状況調査を終え、各学校ではただちに自校採点等に基づく結果分析、本年度の学力向上の取組に着手しています。かつては、調査終了後、国や県から結果が戻されるまで待つ姿勢でしたが、学力調査を活用した学力の実態把握に基づく授業改善のPDCAサイクルが、ようやく定着してきた感があります。
先日、埼玉県教育局の大根田義務教育指導課長に秩父市へお越しいただき、校長会議で学力向上に関する講演をしていただきました。一人一人の学力の伸びを把握する埼玉県独自の学力調査、また、全国における各自治体、各学校の学力の状況を把握する全国学力調査について、それぞれの特徴と活用方法を様々な分析事例を踏まえてわかりやすく説明いただきました。結果の数値に一喜一憂するのではなく、それぞれの調査の特色を活かして学力の実態を把握し、PDCAサイクルを確立し、子どもたちが少しでも「できること」、「わかること」を増やせるように授業改善をしていくことが学力向上の取組の本質であるという認識を共有することができました。
昨年度、秩父市では「チチブチャレンジ」グランドデザインを策定し、学力向上のミッションを「子どもたちの未来の幸せのための学力向上」と規定し、共通理解を図りました。また、秩父市学力向上推進委員会(座長:武藤彰男影森中学校長(当時))において授業改善リーフレット「チチブチャレンジ」を作成し、全教員に配布しました。内容は(1)教師の心得(時を守り、場を清め、礼を正す)に始まり、(2)授業づくり(よい授業を行う10のポイント)、(3)学習規律(学習に集中できる環境づくり)、(4)特別支援教育の視点(ユニバーサルデザイン)、(5)授業の流れ(スタンダード)、(6)アクティブ・ラーニング、(7)板書の仕方とノート指導、(8)発問、(9)机間指導、(10)ICTの活用、(11)家庭学習、(12)読書、(13)学習評価、(14)各調査の活用というものです。教育現場の先生方がアイデアを持ち寄って作成したもので、現場の教師にとってすぐに使える実践的な内容を、簡潔に17ページでまとめています。
今年度も、秩父市の子どもたちの明るい未来をイメージしながら、前向きに学力向上の取組を進めたいと思います。
※秩父市授業改善リーフレット「チチブチャレンジ」は、次のURLからご覧になれます。
http://www.city.chichibu.lg.jp/7034.html
ゴールデン・ウィーク、「芝桜まつり」も終わり、1学期も中盤。子どもたちの安全・安心に緊張感をもって万全を期しつつ、学力向上のための授業改善、学校のあり方改革・教員の働き方改革による業務改善に取り組んでいきたいと思います。平成29年度からの新たな取組として、「コミュニティ・スクール」が尾田蒔小学校、尾田蒔中学校、影森中学校の3校でスタートし、「チーム学校」の取組の一環として、小学校の外国語活動の充実のための外国語活動コーディネーターを各小学校に配置し、効果的に機能するよう取り組みます。
さて、昨年12月、ユネスコ無形文化遺産に登録が決定した「秩父祭」をはじめ33団体の「山・鉾・屋台行事」に対する登録証書授与式が、5月4日、富山県南砺市で開催された全国山・鉾・屋台保存連合会総会に併せて行われました。宮田亮平文化庁長官から、久喜邦康秩父市長をはじめ各団体の代表者へ、ユネスコ登録の証書が直接手渡されました。あらためて、この喜びを市民の皆さんと分かち合うとともに、ユネスコ登録の意味を考えてみたいと思います。
今回の大会の記念講演、文化人類学者・北海学園大学客員教授の岩崎まさみ氏の講演を聴きました。「文化の多様性とユネスコ無形文化遺産保護条約」という演題で、これまで漠然としていた秩父祭とユネスコ無形文化遺産登録の関係をはっきりと理解することができました。
講演の内容をかいつまんでご紹介しますと、「世界遺産は、顕著な普遍的価値や最上級の自然現象などを登録する、いわばエリート主義。これに対し、無形文化遺産は多種多様な無形文化遺産を対象とし、申請に基づき登録されることにより、それまで地域で守られてきた多様な無形文化遺産を国際的に認知し、文化の多様性に対する認識を世界的に深める、いわば平等主義に基づくもの。(秩父祭という)地域にとって価値のあるもの、地域のアイデンティティをユネスコという国際機関を通じて国際的に認知することにより、人類の多様性に対する理解を深めていこうとするもの。これはユネスコ憲章の前文で謳われている、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理、平和につながっており、ユネスコ無形文化遺産を通じて文化の多様性を理解することにより、人類の相互理解を図り、知的・精神的連帯を構築し、もって恒久的世界平和を目指していく」という説明でした。
この様な人類・文化の多様性に対する理解は、学校教育でも求められる国際理解教育や人権教育においても重要な意味を持つものと考えます。今回の「秩父祭」のユネスコ登録を、秩父市の子どもたちにも地域の誇りとして伝えるとともに、その意味をわかりやすく説明していきたいと思います。