平成28年度教育長からのメッセージ

平成28年度新谷教育長のメッセージ

2016年9月23日 虎の教え「眼を離さず、心を離さず」 ~地域ぐるみで若者、子どもたちを育てていく~

 2学期もひと月ほど経ちました。体育祭・運動会もお天気に恵まれ、事故も無く、成功裡に終えることができました。安全かつ感動的な体育祭・運動会の実施に知恵を出していただいた校長先生はじめ学校の先生方、ご協力いただいたPTA、地域の皆様方、子どもたちに声援を送っていただいた皆様方に心より感謝申し上げます。
 さて、この夏、埼玉県内でとても悲しい事件が発生し、1ヶ月が経過しました。このひと月、この事件について考えなかった日は無いぐらい衝撃を受けました。16歳の少年が河原で遺体となり発見され、殺人容疑で17歳、16歳の無職少年、中学生3人を含む5人が逮捕され、その後、傷害致死容疑で、現在、少年法に基づき家庭裁判所に送致されています。現場は秩父から車で約50キロ、1時間程度。他人事とは思えません。事件に至った経緯等を詳しく知り、このようなことは決して起こらないようにしていきたいと思います。
 地元市の教育長の、「もはや学校だけで対応できる問題ではない」との発言の報道がありましたが、全く同感です。被疑者が中学生に加え無職少年も含むということで、中学校だけでの指導は難しく、通り一遍の学校・家庭・地域の連携での対応は難しいと思います。昨年2月に川崎市で起きた事件と酷似しており、昨年の事件の教訓は何故生かされなかったのか、と強く思います。
 少年非行は近年、減少傾向にあると言われています。しかし、ちょっとしたきっかけで、エスカレートし、ブレーキがかからないまま、凄惨な事件に発展し、いわゆる普通の少年が巻き込まれ、このような事件を起こす側になるという新たな様相が気になります。かつてのように、不良グループを取り締まり、深夜徘徊に眼を光らせただけでは解決しない新たな問題があります。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の影響です。子どもたちは自宅にこもっていても、様々な人間に関わっています。大人には見えないところでの、空間を超えた子どもたちの人間関係が形成されています。そこでは、大人の想像を超えるやりとりがなされています。閉鎖集団の中で、幼さ故の歯止めの効かない力が働いています。この新たな状況について、徹底分析と対応策が必要だと思います。今更ですが、学校と地域、関係機関との連携が必要です。それも通り一遍の連携ではなく、このような新たな状況へ対し、真に機能する連携をシステムとしてつくっていくことが肝要だと思います。
 暴力には毅然と立ち向かう対応とともに、一人も取りこぼすことなく、地域全体で包み込む様な対応が必要です。このような事件を起こす少年たちも含め、居場所、やりがいがあり、充実した毎日を送れるよう地域社会の仕掛けが必要です。若者、子どもたちが居なくなる地域はいずれ、消滅します。彼らは明日の地域の担い手です。若者、子どもたちがこの社会で生きることに満足感、充実感を得られるような施策を行う必要があります。学校も、すべての子どもにとって、何よりも楽しく、学びの充実感を得られる居場所にしていくよう取り組んでいきます。
 秩父神社には、ご本殿正面に「子育ての虎」左甚五郎作と伝えられている彫刻があり、次のような、親の心得が書かれています。
  • 赤子には肌を離すな
  • 幼児には手を離すな
  • 子どもには眼を離すな
  • 若者には心を離すな
 ハイテクの時代にあって、「子育ての虎」に学び、子どもから眼を離さず、若者から心を離さない方策を考えていきたいと思います。

2016年9月23日

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