2学期もひと月ほど経ちました。体育祭・運動会もお天気に恵まれ、事故も無く、成功裡に終えることができました。安全かつ感動的な体育祭・運動会の実施に知恵を出していただいた校長先生はじめ学校の先生方、ご協力いただいたPTA、地域の皆様方、子どもたちに声援を送っていただいた皆様方に心より感謝申し上げます。
さて、この夏、埼玉県内でとても悲しい事件が発生し、1ヶ月が経過しました。このひと月、この事件について考えなかった日は無いぐらい衝撃を受けました。16歳の少年が河原で遺体となり発見され、殺人容疑で17歳、16歳の無職少年、中学生3人を含む5人が逮捕され、その後、傷害致死容疑で、現在、少年法に基づき家庭裁判所に送致されています。現場は秩父から車で約50キロ、1時間程度。他人事とは思えません。事件に至った経緯等を詳しく知り、このようなことは決して起こらないようにしていきたいと思います。
地元市の教育長の、「もはや学校だけで対応できる問題ではない」との発言の報道がありましたが、全く同感です。被疑者が中学生に加え無職少年も含むということで、中学校だけでの指導は難しく、通り一遍の学校・家庭・地域の連携での対応は難しいと思います。昨年2月に川崎市で起きた事件と酷似しており、昨年の事件の教訓は何故生かされなかったのか、と強く思います。
少年非行は近年、減少傾向にあると言われています。しかし、ちょっとしたきっかけで、エスカレートし、ブレーキがかからないまま、凄惨な事件に発展し、いわゆる普通の少年が巻き込まれ、このような事件を起こす側になるという新たな様相が気になります。かつてのように、不良グループを取り締まり、深夜徘徊に眼を光らせただけでは解決しない新たな問題があります。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の影響です。子どもたちは自宅にこもっていても、様々な人間に関わっています。大人には見えないところでの、空間を超えた子どもたちの人間関係が形成されています。そこでは、大人の想像を超えるやりとりがなされています。閉鎖集団の中で、幼さ故の歯止めの効かない力が働いています。この新たな状況について、徹底分析と対応策が必要だと思います。今更ですが、学校と地域、関係機関との連携が必要です。それも通り一遍の連携ではなく、このような新たな状況へ対し、真に機能する連携をシステムとしてつくっていくことが肝要だと思います。
暴力には毅然と立ち向かう対応とともに、一人も取りこぼすことなく、地域全体で包み込む様な対応が必要です。このような事件を起こす少年たちも含め、居場所、やりがいがあり、充実した毎日を送れるよう地域社会の仕掛けが必要です。若者、子どもたちが居なくなる地域はいずれ、消滅します。彼らは明日の地域の担い手です。若者、子どもたちがこの社会で生きることに満足感、充実感を得られるような施策を行う必要があります。学校も、すべての子どもにとって、何よりも楽しく、学びの充実感を得られる居場所にしていくよう取り組んでいきます。
秩父神社には、ご本殿正面に「子育ての虎」左甚五郎作と伝えられている彫刻があり、次のような、親の心得が書かれています。
- 赤子には肌を離すな
- 幼児には手を離すな
- 子どもには眼を離すな
- 若者には心を離すな
ハイテクの時代にあって、「子育ての虎」に学び、子どもから眼を離さず、若者から心を離さない方策を考えていきたいと思います。
リオ・オリンピックが開幕し、連日、日本人選手の活躍の様子が報道されています。そんな中、アンチオック市に交流派遣されていた5人の中学生が、アメリカでの14日間の滞在日程を終え、無事、気温37.3度の秩父市に帰って来ました。本当にお疲れ様でした。アンチオック市はカリフォルニア州サンフランシスコ郊外にある都市。秩父市と姉妹都市の関係にあり、青少年派遣交流を行っています。本年度、秩父市から派遣された5人の中学生は、ホームステイをしながら、アンチオック市内視察、サンフランシスコツアー、ホストファミリーとの交流など多くの経験をし、思い出をつくったことと思います。
社会のグローバル化が進む中、若い時期の外国での経験は大変貴重です。外国の人々と直接触れ合うことによって、その国を理解するとともに、英語ができることの素晴らしさ、コミュニケーションの楽しさを体感できます。今回、参加してくれた5人の中学生と送り出していただいた保護者の皆さんに敬意を表したいと思います。
さて、先週、中央教育審議会の教育課程企画特別部会から、本年度中に改訂が予定されている次期学習指導要領の改訂案の全体像が示され、大きく報道されました。特に、英語力育成については、小学校の外国語活動について、現在の5年生からを3年生からに前倒し、5年生からは、新たな教科・外国語(英語)を新設するもので、今回の改訂の大きな目玉になるものと思われます。秩父市においては、この夏の英語教員の研修を小・中学校の教員が一緒に取り組みました。今後、小・中学校間の関連を図った指導を行うためにも、このような取組を強めるとともに、英語力向上に係る取組を充実する必要があると思っています。
現在の小学校の外国語活動は、英語に慣れ親しみ、コミュニケーション能力の素地を養うため、楽しく充実感を持てるよう工夫されています。審議のまとめ(案)によると、新設される教科・英語については、これまでの、「聞くこと」、「話すこと」に加え、「読むこと」、「書くこと」の4領域とするとされています。これまでの外国語活動の実績を活かして、子どもたちが楽しく学べ、かつ、中学校の英語への段階的な橋渡しができるものとなるよう授業の進め方等を研究していく必要があると考えています。
グローバル化に対応し、秩父市の子どもたちの英語力向上にしっかりと取り組みます。
7月も半ば、間もなく夏休み。1学期間の校長先生はじめ教職員の皆さんの日々のご尽力、保護者、地域の皆さんのご支援、ご協力に改めて御礼申し上げます。引き続き、安全・安心な学校づくりに、秩父市を挙げて取り組んでまいります。
さて、現在、埼玉県教育委員会の先生方と一緒に学校訪問を行っています。昨年も全ての学校を複数回訪問し、校長先生の学校経営方針を伺ったり、授業の様子を拝見したりしました。本年も現場主義で、子どもたちが学ぶ様子をしっかりと見たいと思います。
先日、内閣官房の教育再生実行会議担当室長である藤原内閣審議官が文部科学省の初中教育担当者と共に秩父市を訪問され、西小学校、大田中学校、大田小学校を視察されました。教育再生実行会議は安倍総理直轄の会議として平成25年に設置され、いじめ防止対策の第1次提言以降、今日まで9次にわたる提言を出しています。政府はこれらの提言に基づき、いじめ防止対策推進法の制定、新教育委員会制度、義務教育学校など法改正を伴う制度改正を次々に実行しています。藤原内閣審議官は、その事務方の責任者です。学校訪問の感想として、秩父市の子どもたちの素直さ、先生方の熱心さ、校長の学校経営方針、どれも素晴らしいとの評価をいただきました。同行された文部科学省初中企画課壹貫田課長補佐からは、「子供たちの素敵な笑顔、学校の先生がたの子供たちに向き合う真摯な姿、豊かな自然、歴史と伝統に彩られた秩父市、どれも深く私の心に刻まれました」と書かれたお礼のメールをいただきました。これは、私が昨年、秩父市に着任し学校を訪問した時の感想とまったく同じです。本当に嬉しく思います。
秩父市の学校の良さは、これに加え、保護者、地域の皆さんの学校への協力が素晴らしいことです。先日も、下校時に小学校を訪問すると、地域の方が低学年の下校の列に付き添っていただいていました。教頭先生によると、お願いしたのではなく、自主的に付き添っていただいているそうです。本当にありがとうございます。
今後、コミュニティ・スクールとして学校と地域の垣根をもっと低くして、「何よりも子どもたちのため」という共通の目標の下、秩父市の学校を更に良くし、地域の誇りとなる学校づくりを進めたいと思います。
1学期も後半に入りました。梅雨の季節、体調を崩しやすい時期です。子どもたちも教職員も、体調に気をつけて教育活動を進めてほしいと思います。
さて、先日、行田市にある埼玉県立総合教育センターを訪問し、学校教育におけるICT(タブレット端末)活用の状況を拝見しました。タブレットを書画カメラとして用いたり、電子プロジェクターや電子黒板ソフトを使って、児童生徒のタブレット画面を電子黒板に映し出したりしながらの授業展開を実際に体験してきました。
ICT活用については、平成23年4月、文部科学省は今後の教育の情報化推進に当たっての基本的な方針として「教育の情報化ビジョン」を公表し、教科指導における情報通信技術(ICT)の活用により、教育の質の向上を目指すことを明らかにしました。以来、文部科学省では、この「教育の情報化ビジョン」に基づいて、実証研究事業である「学びのイノベーション事業」などの様々な取組を進め、学校現場でのタブレット端末等、ICTの活用による教育の有効性について実践事例を示しました。この間、ICT活用について、先進的に取組を進めている一部自治体においては、教育の効果を上げているという多くの報告がなされています。自治体間格差が懸念される中、埼玉県は総合教育センターにICT環境を整備して、授業におけるICT活用の研究・研修を進めようとしているとのことでした。秩父市がいち早く、整備されたばかりの設備の視察訪問をしたことに対し、センターの幹部の方から歓迎の言葉をいただき、秩父市のICT活用の今後の取組について、県としても協力するとのお約束をいただきました。
6月3日(金)には、秩父市総合教育会議でICT活用に関する議論を行いました。奇しくもその日、骨太の方針と共に閣議決定された「日本再生戦略2016」において、「教育現場でのタブレット端末活用の導入を促進する」という一文が盛り込まれていることが報道されました。また、文部科学省の有識者会議が、2020年度に「デジタル教科書」を解禁するとの中間まとめを公表したという報道もなされました。
このような国や県の動きのある中、秩父市が本年度から学校教育におけるタブレット端末の活用の取組に着手したことは、時宜にかなったものと思います。総合教育会議での活発な意見交換も踏まえ、タブレット端末を活用した教育活動が子どもたちにとっていい教育効果をあげるようしっかりと取り組んでまいります。
ゴールデン・ウィークも終わり、子どもたちは元気に日々の勉学に励んでいます。大切な子どもたちをお預かりしている学校・教育委員会は、緊張感を持って学校運営を進めたいと思います。
さて、5月5日はこどもの日でした。「国民の祝日に関する法律」によれば、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。」とされています。改めて、学校教育において秩父市の子どもたちの幸せを図るよう尽力することをお誓いするとともに、保護者の皆様の子育てへのご労苦に感謝申し上げたいと思います。
総務省は、毎年、こどもの日に際して、子ども人口推計を公表しています。それによれば、我が国の15歳未満の子どもの数は1,605万人で前年に比べ15万人減、35年連続の減少ということでした。この減少傾向は秩父市も同様、厳しい状況です。
少子化・人口減少は、学校教育においても、様々なデメリットが懸念されます。子どもの数が減るということは、教員の数も減り、学校の力全体の衰退も懸念されます。これまでも学校の統廃合の実施など、一定の学校規模を維持する取組を行って来ました。しかし、埼玉県で最大の面積を有する秩父市としては、統廃合といっても多くの難しい課題があります。一方で、少子化により学校の活力が低下することはあってはなりません。この問題を先送りすることなく、教育上の諸課題に、今、しっかり向き合うことが求められています。これを克服するために、教育委員会としては、先ずは、小規模校のデメリットを最小化し、逆に、メリットを最大限に生かす取組に着手したいと思います。
秩父市の未来を見据えて、少子化の中にあっても活力ある学校づくりの在り方について、あらゆる角度からのアプローチを研究していきたいと考えています。