平成27年度教育長からのメッセージ

平成27年度新谷教育長のメッセージ
Thursday, February 4, 2016」で絞込み

 昨年12月に策定された埼玉県の教育大綱を拝見しました。前文の子どもたちへのメッセージには、「障害などの困難さを抱えている方には特別な支援の手を差し伸べること」とあります。また、本文には、発達障害も含め「様々な課題を抱えた子供たちに教育を通じて支援します」としっかりと謳われています。
 ご承知のとおり、我が国は平成26年1月に「障害者の権利に関する条約」を批准し、教育においては、インクルーシブ教育システムの構築が求められています。批准に向けた準備の過程で、平成24年7月には、中央教育審議会初等中等教育分科会から「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」の報告が出され、現在、全国でこの報告に沿った取組が進められています。
 同報告によると、インクルーシブ教育システムにおいては、「同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要である」とされています。
 これは、現在の小中学校の現状をみると簡単なことではなく、県立の特別支援学校との連携・協力は必須といえます。全国的にみても自治体間の取組に大きな差があり、その実現にはまだまだ時間がかかるものと思われます。しかし、共生社会の形成という我が国が進むべき方向に向け、一歩一歩しっかりと取り組んでいく必要があります。
 インクルーシブ教育システム構築においては、その前提となる、障がい理解、障がい者理解が極めて大切です。そこで、秩父市においては、本年度、文部科学省から「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」の委託を受け、パラリンピック種目などを通じた交流および共同学習による障がい者理解(心のバリアフリー)に取り組みました。
 アンプティーサッカー日本代表・元パラリンピック陸上選手である障がい者アスリートとの交流、「パラリンピックを10倍楽しむ」と題した講演会、パラリンピック種目である「ボッチャ」を通じた交流および共同学習の3本の柱で取り組みました。これらの取組の中で、子どもたちの交流の際の表情やその後の感想文を拝見すると、子どもたちが如何に素直に、障がい者と向き合うことができ、自然な交流ができるのか、ということがよく分かりました。
 共に学ぶ際に最も大切な視点は、「障がいのある子どももない子どももそれぞれに、授業内容が分かり、学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうか」です。 

本年4月からは、障害者差別解消法が施行され、公立の学校に対しても、障がい者への合理的配慮が法的義務として求められます。ユニバーサルデザインの授業など、障がいの有る無しに関わらず、より一人一人の学びを大切にした教育を進めていきたいと思います。

2016年2月4日

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